オブジェクト指向


イベント参加レポート集

イベント参加レポート集

■ オブジェクト指向 - イベント参加レポート集 1 (この頁)本頁内

・ UML Forum/Tokyo 2001本頁内 2001/03/21〜22
・ ObjectDay 2001本頁内 2001/05/18
・ Rational Rose/ラショナル統一プロセス徹底検証セミナー本頁内 2001/08/24
・ UMLによるオブジェクト指向分析・設計演習(.NET Webサービス実践編)本頁内 2002/3/11〜14
・ UML Forum/Tokyo 2002本頁内 2002/03/26〜27
・ OBJECT DAY 2002本頁内 2002/06/25〜07/24

オブジェクト指向 - イベント参加レポート集 2 (次の頁)別頁

・ UML Forum/Tokyo 2003別頁 2003/04/16〜17
・ クリスマス企画 オブジェクト指向実践者の集い 〜オブジェクト倶楽部が街にやってくる〜別頁 2003/12/16
・ UML Forum/Tokyo 2004別頁 2004/04/13〜14
・ パターンワーキンググループ設立一周年記念セミナー別頁 2004/05/27

オブジェクト指向 - イベント参加レポート集 3 (次の次の頁)別頁

・ 納涼イベント オブジェクト指向実践者の集い 第二弾 〜本当にあった怖い話〜別頁 2004/07/09
・ クリスマス企画 オブジェクト指向実践者の集い別頁 2004/12/09
・ オブジェクト指向実践者の集い 2005夏別頁 2005/06/29
・ オブジェクト倶楽部 2005クリスマスイベント別頁 2005/12/16

XP (エクストリーム プログラミング) - イベント参加レポート集はこちら別頁

凡例:
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・「UML Forum/Tokyo 2001」

2001/04/04

「UML Forum/Tokyo 2001」に参加して来ました.

【場所】
東京ファッションタウンTFT

【日時】
2001/3/21 (水)〜22(木)

【参加目的】
UML を中心とした最新のオブジェクト指向技術に関する情報収集

【参加内容】

〇 3月21日 (水)
・開幕記念講演:「UMLによるビジネスインテグレーション」 マーチン・ファウラー
・基調講演:「UMLの導入と適用の実際」 藤井 拓
・特別講演:「ソフトウェア開発プロジェクトにおけるUMLの位置付け−CAのUML戦略」 ディルハー・デシルバ
・「UMLによるコンポーネントモデリングと開発プロセスXP」 長瀬 嘉秀
・「UMLとアナリシスパターン」 児玉公信,羽生田 栄一
・「プロジェクト・プランニングの新展開」 マーチン・ファウラー
・パネル:「UML 2.0:ユーザーは何を必要としているか?」 クリス・コブリン,マーチン・ファウラー,シュリダー・イェンガー,イヴァー・ヤコブソン,コンラッド・ボック

〇 3月22日 (木)
・開幕記念講演:「UMLとソフトウェア開発の将来」 イヴァー・ヤコブソン
・主催者挨拶:「OMGのオープン・アーキテクチャとUML」 アンドリュー・ワトソン
・「OMGにおけるUML:過去,現在,未来」 アンドリュー・ワトソン
・「ソフトウェア開発パラドックスの解消」 イヴァー・ヤコブソン
・「UMLにおけるアクション・セマンティクス」 コンラッド・ボック,スティーブ・メラー
・「日本における XP の現状」 平鍋健児

【感想】

○ 全体を通して

UML を開発してきた方々のお話を直に聞くことが出来,大変エキサイティングで有益な経験になりました.
これまで書籍や研修を通してオブジェクト指向技術を学んで来ましたが,より新しく具体的な内容をその推進者から聞くことが出来ました.また,日本国内の他の企業の取り組みの様子等も雰囲気を掴むことが出来たと思います.
また,UML の重要性についても認識を新たにしました.益益積極的に広めていきたいと思います.

○ 各部感想

多くの技術者が実際に UML を使って開発を行っています.但し,人によって提唱するオブジェクト指向技術や UML の使い方に違いがある,と感じました.
マーチン・ファウラーさん (*1) は,「UML を余りヘビーな道具として使いたくない.CASE ツールも余り好まない.CASE ツールを使って書かずともホワイトボードに手書きしてコミュニケーションすれば良いし,若し保存したければデジタル カメラで撮れば良い」と仰っていました.
パネル ディスカッションで同席していたシュリダー・イェンガーさん (*2) も,UML 2.0 では今の 1.4 より仕様を削ったライトなものが望ましい,という御意見のようでした.
それに対して,イヴァー・ヤコブソンさん (*3) は UML をいずれは実行可能なものにして,現在の Java や C++ のような言語を使わなくても開発が出来るように拡張して行きたい,との御意見で,対象的だったのを大変興味深く聴きました.

(*1) ソフトワークス社のチーフ サイエンティスト.「アナリシス パターン」の著者として有名で XP (eXtreme Programing) のようなライトウェイトな手法の提唱者.XP に関する書籍も出していて,4 月 19 日にその日本語訳が発表される予定.
(*2) ユニシス社でオブジェクト技術製品を指揮.XMI のチーフ アーキテクト.
(*3) ラショナル ソフトウェア社.OOSE (オブジェクト指向ソフトウェア エンジニアリング) 法の発明者として世界的に著名な博士.UML の作成者の一人.

・オブジェクト指向の開発プロセスである RUP (Rational Unified Process) と XP (eXtreme Programing) に関するカンファレンスに参加しました.
RUP には興味が有り,以前から調査していた手法ですが,その権威であるイヴァー・ヤコブソンさんからお話を伺いました.理解していたものと同じものでしたが,別の切り口で説明を聞くことが出来て良かったと思います.
XP に関しては,マーチン・ファウラーさんから思想的な部分の話を聞くことが出来ました.また,日本国内での XP への取り組みに関して永和システムマネジメント (福井市) の平鍋健児さんから非常に判り易い解説をして頂きました.
XP は米国では結構流行しているようですが,日本でも徐徐に広まりつつあります.4 月 19 日には,「XP エクストリーム・プログラミング入門」の著者である ケント・ベック氏が初来日して講演を行います.
・まだ不勉強であったアナリシス パターンについての判り易いカンファレンスに参加することが出来ました.勉強の取っ掛かりにしていけると思います.

【その他の情報】

CBOP

「UMLForum/Tokyo2001速報」
UMLForum/Tokyo2001 Martin Fowler 講義録
UMLForum/Tokyo2001 長瀬氏 講演内容
UMLForum/Tokyo2001 大林氏 講演内容


・「ObjectDay 2001」

2001/05/24

「ObjectDay 2001」に参加して来ました.

【情報】
場所:ホテルパシフィック東京 (品川)
日時:2001年5月18日 (金)
主催:株式会社オージス総研

【参加目的】
・最新のオブジェクト指向技術に関する情報の収集及び習得.

【参加内容】

1. 『Rubyのある生活』
講師:ゼータビッツ(株) 開発部主任研究員 まつもと ゆきひろ氏

SmalltalkともC++とも違うオブジェクト指向プログラミングを提供するオブジェクト指向言語Ruby,その作者がRubyの背景にある思想や哲学から機能,応用までを解説.

2. 『.NETアーキテクチャとXMLフレームワーク技術の今後』
講師:(株)マイクロソフト .NETソリューション開発部 シニアテクニカルエバンジェリスト 萩原 正義氏

.NET の機能の概要を紹介するスタイルではなく,アーキテクチャが誕生するに至る経緯,その方向性,設計パターンからの視点について解説.また,Java VMとの比較,Web Servicesの現状を踏まえたSOAPの将来と方向性,特にWSDLの動的バインディング,RPCベースのstrong typedとdocumentベースのtypelessとの違いが持つ意味とオブジェクト技術への影響についての議論.

3. 『UMLとXMLが支える,これからのWebサービス&アプリケーション』
講師:OGIS International, Inc. リサーチャー 大場 克哉氏

本講演では,いまやWebベースのアプリケーション開発に不可欠の技術となったXMLを活用したソフトウェア開発を成功に結びつけるために,オブジェクト指向開発方法論に基づいて,XMLとUML(Unified Modeling Language)の関係について考察し,将来のWebアプリケーション開発を展望.

4. 『<パネルディスカッション> XP談義 -その有効性を問う-』
パネリスト:
(株)永和システムマネジメント 情報テクノロジセクション セクションマネジャ 平鍋 健児氏
(株)テクノロジックアート 代表取締役 長瀬 嘉秀氏
(株)アイザック 大阪開発室 石井 勝氏
(株)オージス総研 オブジェクトテクノロジー・ソリューション部 梅澤 真史氏
CATS(株) 取締役 副社長 渡辺 政彦氏
(有)インアルカディア主宰 藤野 晃延氏
(株)システムクリエイツ 代表取締役 清水 吉男氏
(株)オージス総研 オブジェクトテクノロジー・ソリューション部 竹政 昭利氏

light-weightなOO開発手法として現在非常に脚光を浴びているXP(eXtreme Programming).うまく適用できれば生産性を著しく向上させると期待されています.一方でそのラディラルさは,従来のやり方と対立する部分もあり,XPのあまりの加熱ぶりを危惧する声も聞かれます.そこで,本パネルディスカッションでは,XP擁護派,XP対立派を一同に会し,XPの確信にせまるべく多彩な方面から集まった各識者による討論を行いました.

【感想】

「オブジェクト指向」と最近の新しい概念や技術との様様な関わり方を知ることが出来たと思います.今後もこのようなカンファレンスに参加していくことは必要であると感じました.

「オブジェクト指向」と新しい技術との関わり方としては,.NET や Java による Webサービスの話題がホットでした.また,それらに関係する技術として,XML 関連の技術 (SOAP,ebXML) や UDDI,WSDL 等が紹介されていました.

特に面白かったものをあげてみると,

・UML と XML の関わり
「UML で書かれたモデルを如何に XML にし,可搬性をあげるか」
「XML アプリケーションを如何に UML でモデリングするか」
「またその為に UML をどう拡張すべきか」
「XML アプリケーションにどうデザインパターンを適用するか」

・Java と .NET の思想の違い
「.NET は Java と違ってサービス指向である」


その他,特に興味深かったのは,XP (エクストリーム・プログラミング) に関するパネルディスカッションでした.
XP の「支持派」と「懐疑派」に分かれて議論を行いましたが,XP 懐疑派の方方の主張が大変勉強になりました.
例えば,

・なぜ開発プロセスが必要なのか,それはこういう理由である
「ノウハウを継承するため」
「プロセスを定義するのはプロセスの品質を上げ,それによって製品の品質を上げるため」
「各自がプロセスを自分のものとして定義出来ていなければ,それはプロセスを使っていない」
「本当に仕様の変更は頻発するのか」
「要求と要求仕様の区別が付いていますか」

・なぜ開発がうまくいかないか.
「それは開発開始時には知らないこと (unknowledge) があり,開発が進んでもその全部を無くすことが出来ないから」
「『知らない』にもレベルがある」

等等.

オブジェクト指向関連技術に関わっている人達のそれぞれに異なった考え方に触れることが出来たと思います.

【その他の情報】

・ObjectDay2001 の資料がダウンロードできるように成りました
    http://www.ogis-ri.co.jp/otc/objday2001/


・「Rational Rose/ラショナル統一プロセス徹底検証セミナー 〜なぜ今 UML が必要なのか? 理由が今明らかに〜」

2001/08/24

「Rational Rose/ラショナル統一プロセス徹底検証セミナー」に参加して来ました.

【情報】

タイトル:Rational Rose/ラショナル統一プロセス徹底検証セミナー 〜なぜ今 UML が必要なのか? 理由が今明らかに〜
場所 :大阪全日空ホテル
日時 :2001年8月24日 (金)
主催 :日本ラショナルソフトウェア株式会社,株式会社 SRA


【目的】

・最新のオブジェクト指向技術に関する情報 (特にラショナル統一プロセスに関して) を得,それを習得する.


【内容】

■ 何時誰がどの UML ダイアグラム (図) を書けば良いのか.

1. ビジネス アナリスト - ビジネス モデル (ビジネス境界の定義,ビジネス ドメインのモデル) ・ユースケース ダイアグラム (ビジネス ユースケース モデル)
    ・アクティビティ ダイアグラム (ビジネス ユースケース モデルにおける処理の流れを示す,これを書くのはビジネス アナリストのみ)
    ・クラス ダイアグラム (ビジネス オブジェクト モデル)

2. 分析者 - 要求定義,分析モデル (システム境界の定義,要求の定義)
    ・ユースケース ダイアグラム (ユースケース モデル)
    ・コラボレーション ダイアグラム (ユースケース モデル,アクターとシステム間のもの)
    ・シーケンス ダイアグラム (ユースケース モデル,アクターとシステム間のもの)
    ・クラス ダイアグラム (ドメイン モデル: ビジネス アナリストの時より少し詳細なモデル)

3. ソフトウェア エンジニア - 設計モデル (実現方法の定義,メカニズムのモデル)
    ・ユースケース ダイアグラム (実現ユースケース モデル)
    ・シーケンス ダイアグラム (実現ユースケース モデル: 分析時より詳細なモデル)
    ・クラス ダイアグラム (ソフトウェア モデル,アーキテクチャ モデル: 分析時より詳細なモデル)
    ・ステートチャート ダイアグラム (状態図) (オプション)
    ・ディプロイメント ダイアグラム (配置図) (オプション)

4. 実装者 - 実装モデル (設計モデルの実現)
    ・コンポーネント ダイアグラム (実装モデル,プロセス モデル)
    ・ディプロイメント ダイアグラム (配置図) (システム モデル)
    *設計モデルの UML ダイアグラムは完璧に読めなくてはならない.

5. テスト設計者 - テスト モデル (テスト ケースの識別)
    *分析モデルのユースケース ダイアグラム,コラボレーション ダイアグラム,シーケンス ダイアグラムを読めなければならない.

6. プロジェクト管理者
    *ユースケース単位でプロジェクトの進捗を管理

■ ラショナル統一プロセス (Rational Unified Process: RUP) の検証

・より早くより高品質なソフトウェアを作成するのが目的.
・多くのプロジェクトは失敗している.又,規模が大きい程失敗し易い.

・プロジェクトが成功する為の要素
    1. コミュニケーション エラーを避ける -> UML
    2. 再利用を意識したワーク フロー -> RUP

・RUP の概要

・RUP の十の要点 (The "Ten Essentials" of RUP,先ずはこれだけやろう)
     1. 開発構想書の作成
     2. 計画の管理
     3. リスクの識別と軽減
     4. 配置と配分の課題
     5. 開発企画書を検証する
     6. コンポーネント アーキテクチャ設計
     7. プロダクトをインクリメンタルにビルド,テスト
     8. 定期的な評価と結果の資産化
     9. 変更要求の管理と統制
    10. ユーザー サポートの提供

■ UML の紹介

・UML の説明
・UML の今後: UML2.0

■ UML 対応モデリング ツール Rational Rose の機能の紹介

・デモ等.
・各ツール等の RUP における位置付け.


【所感】

時間は短かったが,RUP の最重要点と RUP と UML の関係について学習を進めることが出来,有意義であった.

RUP は重要で中心的なプロセスであるが,最近流行りのライトウェイトな開発プロセス (Agile Process) と比較して,やらなければ成らない事,ドキュメント,ツール類等が沢山必要であり,特に小さなプロジェクトに用いるには大変,と云うイメージがある.
RUP を薦める人が,「RUP はカスタマイズ可能であるから,軽量なプロセスが必要ならその様にカスタマイズすれば良い」のように云うのを最近良く耳にする.その通りだが,私感では幾らカスタマイズしても矢張り RUP は (良くも悪くも)「重い」プロセスであると思う.
それでも,今回は実際の RUP の姿と RUP のミニマム セットとしての形を目にしたことで RUP をカスタマイズして適用する為の重要なヒントを手に入れることが出来たと思う.

・「UMLによるオブジェクト指向分析・設計演習(.NET Webサービス実践編)」

【情報】

タイトル:UMLによるオブジェクト指向分析・設計演習(.NET Webサービス実践編)
場所 :東京 株式会社 豆蔵 四谷トレーニングルーム
日時 :2002/3/11(月)〜3/14(木)
主催 :豆蔵
講師 :上野 氏と長原 氏 (豆蔵)

【目的】

・オブジェクト指向の手法を,.NET による Web サービス・Web アプリケーションをの開発に適用する方法を習得し,研修等の企画に活かす.

【内容】

【所感】

  .NET 関連の開発者なら御馴染みの Web サイト「@IT - アットマーク・アイティ <http://www.atmarkit.co.jp/>」には「読者プレゼント」と云うコーナーが有る.時折これに応募していたが,今回この研修が当たった.
  割と簡単に当たった感があったが,参加してみるとプレゼントで来ているのは私一人.全部で 20 人程度の参加で (これ迄参加したこの手の研修と比較しても) かなりの盛況ぶりであった. 
  普通に参加すると,受講料は 20 万円だそうで,@IT の担当者曰く「ものすごい倍率での当選」だったとの事. 

  主催は,国内でオブジェクト指向技術を勉強している人の間では割と有名な「豆蔵」.オブジェクト指向を用いた開発やオブジェクト指向に関するコンサルティング・教育等を行っている会社で,社長の羽生田氏と副社長の萩原氏は「その方面」では知られている方だと思う. 
  羽生田氏は以前御話を伺ったことがある.確か別の人と一緒に「アナリシス パターン」の話をされていた.漫才のような掛け合いで,あの思い切り抽象度が高く難解なマーチン・ファウラーの「アナリシス パターン」を,大変ユーモラスに判り易く説明していて,感心した覚えがある.「アナリシス パターンを判ったような気に成った」最初でもある. 
  今回も羽生田氏や萩原氏の御話を期待して行った訳であるが,講師は別の方々であった.贅沢の云えない身分ではあるが,一寸残念な思いをした. 

  総合的にみて良い研修だったと思う. 
  オブジェクト指向分析・設計を扱った研修は結構あるが,Java を対象にしたものが多く,偶に C++ や Smalltalk もあるが,.NET と C# をターゲットにしたものは少ない.一般的な研修の内,Web サービス構築を演習で行うものは,今の所多分これが唯一であると思う. 

  多分,Web アプリケーションには,オブジェクト指向分析・設計が向いている.
  但し,オブジェクト指向分析で作成したドメイン モデルをどのようにして Web アプリケーションとして設計/実装するかは,難しい課題を幾つも含んでいる.にも関わらず,具体的に説明した書籍や研修は余りない.貴重な研修を受講出来たと満足している. 
  この研修中でも説明された「Unified Process」 と云う開発プロセスは実は結構メタなプロセスで,実際の開発に適用する場合には色色とカスタマイズしてやって,そのプロジェクトに適合するようにしてやる必要がある場合が多い.謂わば 「Unified Process と云う プロセスのインスタンスを作ってやって,それを実際のプロセスとして用いる」みたいな事が多いのであるが,Web アプリケーションの場合は特にそれが重要且つ難しいポイントになると思う. 
  今回は演習を通して Web アプリケーションの構築時にはどのように適用するのが良いのか,その一例 (インスタンス) を実際に体験出来たと思う. 

  演習の最後には,一人一台のコンピュータ上で,実際に Visual Studio .NET と C# を用いて「中古車を販売する」Web サービスを作成し,Web 上にある「中古車販売店」にそれを登録.そして販売のデモを行った.このように一応実装の最後迄体験出来る「オブジェクト指向」研修は,実は貴重である.実装は時間が掛かるため,実装のきっかけだけ説明して終わる研修が殆どである.勿論,事情が許せば実装迄演習で扱った方が良いに決まっている.今後何とかして見習って行きたい点である.

  と,ここ迄良いと感じた点を上げて来たが,細かい部分で若干気に成った点もあった.以下にあげてみたい.

【その他の情報】

豆蔵「UMLによるオブジェクト指向分析・設計演習 (.NET Webサービス実践編)」


・「UML Forum/Tokyo 2002」
【場所】

東京ファッションタウンTFT


【日時】

2002/3/26(火)〜27(水)


【参加目的】

UML を中心とした最新のオブジェクト指向技術に関する情報収集


【参加内容】
【所感】

セッションには有料のものと無料のものが有るが,今回は (ケチって) 無料セッションのみに参加した.
オブジェクト指向技術も矢張り日進月歩である.今後も継続的に注目していく必要があると思う.

■ MDA について

現在 OMG (Object Management Group)MDA (Model Driven Architecture) に力を入れており,内容もかなりそっち (どっち) に寄ったものであった.

・PIM (Platform Independent Model: プラットホームに依存しないモデル) を作成し,
(例えば九割位の) プログラム コードはそこからツールで自動生成してしまう.或るいはUML で書いたモデル自体が実行可能に成っている.
現在もそのように開発された事例が存在している (特に組み込み系での事例が紹介されていた).

・既存のプラットフォームやミドルウェア,言語,その他リソースを使えるようにする.
・プラットフォーム非依存で且つ標準として既に確立された技術として UML (Unified Modeling Language) (とその周辺技術) を中心に据えている.

・そのような MDA を実現する為には,ツールが必要に成るが,今回は
のようなツールが紹介されていた.

・一方で又,『モデリングはどこへいった? 超人 XP プロジェクト紹介』のような対照的なセッションも有ったり,会場内で「ソフトウェア職人気質」と云う本が売れていたりするのが興味深かった.

・OMG 会長兼 CEO のソーリー氏は,しきりに既存の言語やミドルウェアが無くなる訳ではない事を強調していた.それらを統合するものだと (この辺りにはなんとなく疑問を感じた).

■ UML 2.0 について

UML 2.0 に情報収集も兼ねていた筈だが,関するセッションには殆ど参加していない.

■ UML ロボットコンテストについて

「UML ロボットコンテスト」と云うのをやっていた.


■ 印象に残った言葉

聴講したセッションの中で印象に残った言葉や疑問に思った言葉を以下に羅列してみたい.いずれ自分なりに考えが(まと)まる迄保留 (謎).

・「モデルは一つ」
ソース コードはそのモデルの「実装者側からのビュー」に過ぎない.
モデルとソース コードはリンクしていなければならない.

・「開発プロセスを何で記述するか」
取り敢えずは,アクティビティ図が良いのではないだろうか.
SPEM (ソフトウェアプロセスエンジニアリング管理) についても調査が必要かも知れない.

・「開発を成功させる為には,顧客と開発者の双方が先ずビジネスを理解する事」
ツールとしては UML を使うと良い.

・「再利用性について」
「パターン」と「コンポーネント」と「フレームワーク」と「テンプレート」どれも再利用性の向上を目指しているが,どう違う? オブジェクト指向では「抽象化」によって「再利用性」を高める?

・「オブジェクト指向関連技術の教育」

今後特に大切なのは技術者の育成であると感じた.私には参加者の殆どが優秀な技術者に見えた.

・「抽象度が高い儘での開発」
実際にはそんな事出来やしない,と云う声が彼方此方で聞こえる.社内でも.そうなのか?

・「大きなシステム,クリティカルな用途に使われるシステムはどのように開発すべきか」

・「アプリケーション開発の難しさは『他人の作りたいものを想像して作る』と云う事」

【雑感】
〜 オブジェクト指向技術導入の (再度の) 勧め 〜

いや楽しかった.新しい技術に触れるのは楽しいものである.
何しろ見渡す限りオブジェクト指向や開発プロセスに興味深深の人ばかり.皆生き生きしている.

オブジェクト指向技術を採用しようかどうしようかと迷っている人はもうそんなには居ないだろう.

そう.迷うのはもう終わりにしよう.取り敢えず他に選択肢が思い付かない以上オブジェクト指向しか無いのである.

例えば「オブジェクト指向技術の導入にはコストが掛かるから」と云う人がいる.確かにその通りかも知れない.併し,そんなに御金を掛けられないのなら (又は上司を説得する自信が無いのであれば),先ずはボトムアップで御金の掛からない処から始めてみる手が有る.

例えばの話だが,「オブジェクト指向技術の導入の為に掛けられる時間は 1 週間位だ.それ以上は忙しくて無理だ」と云う声も有る.そうかも知れない.そしてそれでも何もしないよりは幾分マシだと思えるかも知れない.
併し,今時間が無いのなら多分この先も無い.そして多分ずっと何も変わらない.それは「忙しいから効率の事等考えていられない」と言っている事なのだから.

オブジェクト指向技術とか開発プロセスを「採用しない理由」を探すのは容易だが,代替案は多分簡単には見付からない.「この開発プロセスはここが駄目だから使えない.少なくともうちには合わない.採用は無理だ」等と言うのは簡単である.だが,貴方の会社の仕事は一般的な手法が通用しない程この業界の中で特殊なのだろうか.

それからこれが重要な事なのだが,多くのオブジェクト指向技術とか開発プロセスは,多分「現在の遣り方」よりマシである.ベストでないと採用出来ないと云う事はない筈である.ベターであれば採用について考える価値が有る.それとも現在の貴方の会社の遣り方の方が,これ迄数十年に渡って多くの研究者や技術者が考え工夫して来た遣り方よりも優れているのだろうか.
併しながら,若し誰かが,「そうだ.今の遣り方の方が良い」と信念を持って言えるのなら,それは屹度素晴らしい事である.若しそうならその方にオブジェクト指向技術等多分必要ない.寧ろその方が UML Forum の壇上に上がって彼等 (つまりヤコブソン達) を説得するべきであろう.

繰り返しに成るが,迷うのはもう終わり.考えるべき事は他に有る.「何時何を始めるか.その為に必要なものは何か」である.


貴方が若し管理者だったとして次の二つのどちらをより評価するだろうか.

1. 毎日定時に帰るチーム
2. 毎日残業し休日出勤も厭わないチーム

では次の二つではどうだろう.どちらをより評価するだろうか.

1. 予定工数内で作り上げたチーム
2. 大幅に予定工数をオーバーしたチーム

「2 だ.ソフトウェア開発と云うのは昔からそう云うものだし,これからも変わらない.私の部下も勿論この遣り方が好きだ」と言うだろうか.

ソフトウェア開発を取り巻く環境はかなりの速度で変化している.そんなにのんびりしている人は UML Forum の参加者の中にはそう多くなかっただろう.

【最後に多分どうでも良い余談】
  1. 講師の方にサインをねだりに行った (*1).

    約一年前にこの Forum に参加した時 (*2) にもサインを貰いに行ったのだが,本人 (*3) を前にして情けない事に「サインくれ」を英語で言えない.
    「確か "Sign, please." は正しい英語でなかった筈」と云うのだけが頭に在った.で,恐らく「私は貴方の署名を欲しているが,貴方はその事に関して構わないか」のようなややこしい事を (英語で) 言ってみたのだが,怪訝な顔をされた記憶が有る.

    (*1) 「ミーハー」だと思われるかも知れないがけしてそうではない.社内研修のネタ作りの為止むを得ず (謎)
    (*2) UML Forum/Tokyo 2001
    (*3) マーチン・ファウラー


    で,今回はきちんと「サインくれ」を英語でどう言うのかを調べておいた.そして,手始めに,今回「実行可能な UML」に関する特別講演をされたレオン・スターさんの所へ行ってみた.

    私   : "May I have your autograph, please?"
    レオン: "Of course!"

    一発で通じて快くサインに応じて貰えた.



    だがそれが諸刃の剣 (謎) であった事にやがて気が付いた.

    私が余りに完璧な英語 (そうか?) でサインを求めた為に,レオンは「こいつは英語が少しは話せるようだ」と思ったらしい.その後笑顔で色色と話し掛けて来た.こちらはそれなりに受け答えした心算だったのだが,今思えば多分こんな感じだったのだと思う.

    レオン:「それで,君はこのフォーラムで何の仕事をしているのか」
    私     :「エンジニアです」
    レオン:「……いやそうでなくて,このフォーラムでは何かを担当しているのか」
    私    :「ウィンドウズ上でアプリケーションを作っていました」
    レオン:「……」

    レオンは相変わらず笑顔だったが,もう目が笑っていない.既に「こいつと話をしても無駄だ」と言う目に変わっていたようである.

    その後,ヤコブソン氏にもサインを貰いに行ったのは云う迄もない.



    ツーショット写真迄撮ってしまった.大切な何かを失ったような気がしたが,後悔はしていない (謎).

  2. 一日目の夜,メーリング リスト "UML-jp" のオフ会に参加させて頂いた.セミナーでは聞けないような御話を沢山伺う事が出来た.大変美味しい思いをした.

・「OBJECT DAY 2002」

「OBJECT DAY 2002」に参加した.

参加レポートは以下に書いた.

オージス総研 - オブジェクトの広場 - 2002年9月号 - OBJECT DAY 2002 レポート

レポート3:『モデリング座談会 --- UML の現状と今後』
http://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/specials/oday2002/report/oday2002_3.html


オブジェクト指向 - イベント参加レポート集 2 (次の頁)